++ サルでもわかるTPP 公式サイトより転載 ++
2015.10.25 2015.10.22 20141.9 2013.7.30 2013.3.6 2012.9.15 2011.10.22初版
公式サイトより転載↓

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by 安田美絵 @ ルナ・オーガニック・インスティテュート  著作権フリーです。リンク、転載、配布、熱烈歓迎いたします!
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【新着情報】
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そもそもTPPというのは、
 「輸入品が安くなる」とか「輸出し易くなる」などと
 本質を隠して関税のことばかりTVワイドショーが喧伝していますが、
TPPの本質はそこではないですね。


本質の一つがこれ、
10月17日 「TPPで日本の医療制度が崩壊する!?」 1
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10月17日 「TPPで日本の医療制度が崩壊する!?」 1.mp4
10月17日 「TPPで日本の医療制度が崩壊する!?」 2
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10月17日 「TPPで日本の医療制度が崩壊する!?」 2.mp4
 ■ 鈴木宣弘教授講演Stop!TPPB暗躍する官僚たち --> こちら
   TPPの裏舞台の実態がよくわかるビデオです。
    クリックで動画のページへ
   suzukiNobuhiro3_ss.jpg

 ■ 米韓FTAの悲惨な現状 〜ニッポンのTPPがその後を追い、なぞっている --> こちら
   TPPというのは、米韓FTA そのものです。
   先に先輩の具体的な事例を見ておけば、もっと理解しやすくなると思います。
   TPPのことなら米韓FTAでわかる リンク先↓
    TPPのことなら

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サルでもわかるTPP  公式サイトより転載

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もくじ

第1章 TPPって何?

第2章 「TPPで発展!」 の、勘違い
 1.「農業のために工業を犠牲にしていいのか」 の、ウソ
 2.「関税なくせば輸出が伸びる」 の、ウソ
 3.「TPPでアジアの成長を取り込む」 の、ウソ
 4.じゃあ、どうすれば輸出が伸びるの?

第3章 TPPに入るとどうなる?
 1.日本の法律が日本人を守れなくなってしまう
 2.TPPで医療はどうなる?
 3. TPPで賃金が下がる
 4. TPPでデフレが進む
 5. 「投資」の国境がなくなるとぉ
 6. 「金融」の国境がなくなると…

第4章 なぜ日本は加盟したい?
 1.企業の海外進出が有利に
 2.日本の金融機関ももうかる
 3.商社は表示の“自由”どが広がる

第5章 TPPでは幸せになれない
 格差社会をより一層、進めるのがTPPだ。
 TPPはこの悪い意味でのグローバリゼーションを強力に推進する協定だ

第6章 わたしたちにできること

第7章 TPPと遺伝子組換え
 1.表示が「非・関税障壁」に
 2.遺伝子組換え作物は安全なの?
 3.遺伝子組換え作物の栽培が始まると
 4.食料による世界支配

第8章 経団連会長とTPPの関係

第9章 自由貿易について考えよう
 1.貿易は自由なほうがいい?
 2.貿易によるお金の流れ
 3.自由貿易は先進国に都合がいい

第1章 TPPって何?

Trans-Pacific Strategic Economic Partnership Agreementの略で、日本語では「環太平洋戦略的経済連携協定」、「環太平洋パートナーシップ協定」ともいう。
参加国の間で関税(輸出入にかかる税金)を、一切なくそう、関税以外でも経済のあらゆる国境を取り払おう、という協定だ。
はじめはシンガポール、ブルネイ、チリ、ニュージーランドの4か国の間で交渉が始まった。それにベトナム、チリ、オーストラリア、ペルー、マレーシア、アメリカが加わって、現在9か国で交渉が進められている。
日本は2011年11月、ハワイで行われるAPEC(アジア太平洋経済協力会議)で、参加交渉入りするか、しないかで、今揺れているところなんだ。

★TPPは足抜け、不能?
説明: http://www.luna-organic.org/tpp/image-tpp/monkey-1.jpg
TPPは、
一度交渉に参加したら、脱退は事実上不可能といわれちょる。
キー、キケン!
?

★TPPは、ぼったくりバー!?
説明: http://www.luna-organic.org/tpp/image-tpp/cat-1.jpg
TPPの交渉は、秘密りに進められていて、詳しい内容は明らかにされてないニャい。
詳しい内容もわからないのに参加するなんて、まるでぼったくりバーに入るようなもんだニャ〜
         
交渉内容はとても幅広く、24もの分野に渡っているよ。
1 首席交渉官協議
2 市場アクセス (工業)
3 市場アクセス (繊維・衣料品)
4 市場アクセス (農業)
5 原産地規則
6 貿易円滑化
7 SPS(検疫、及びそれに付随する措置)
8 TBT(貿易上の技術的障害)
9 貿易保護
10 政府調達
11 知的財産権
12 競争政策
13 サービス (クロスボーダー)
14 サービス (電気通信)
15 サービス (一時入国)
16 サービス(金融)
17 サービス (e-commerce)
18 投資
19 環境
20 労働
21 制度的事項
22 紛争解決
23 協力
24 横断的事項特別部会(中小企業,競争,開発,規制関連協力)

第2章 「TPPで発展!」の勘違い

1.「農業のために工業を犠牲にしていいのか」のウソ
かつて前原外務大臣(当時)は、「農林水産業のGDP比はわずか1.5%。この1.5%を守るために、残りの98.5%を犠牲にしていいのか」という意味の発言をした。
この発言が盛んにマスコミに取り上げられたもんだから、TPP反対=農業を守ること←→TPP推進=工業輸出を伸ばすこと、と勘違いしちゃってる人がすごく多い。
日本はコメに高い関税をかけてる(700%以上)。TPPに入ると、関税がなくなって、外国から安いコメがたくさん入ってくるだろう。安いものに飛びつく消費者は多いから、日本のコメが売れなくなって、日本のコメ農家には大打撃だ。だから、TPPは日本の農林水産業に打撃を与える、というのは間違ってない。
でも、TPPに入らなかったら、残りの98.5%は本当に犠牲になるのかな?
日本が輸出で稼げるものといえば、自動車、家電製品など(「耐久消費財」と呼ぶよ)が主。では、耐久消費財の輸出額はどれだけかというと、GDP比1.652%しかない(2009年度)。
なんだ、農林水産業の1.5%とたいして変わらないじゃん!てことがわかる。

説明: http://www.luna-organic.org/tpp/image-tpp/monkey-2-1.jpg
キー!
残りの98.5%が犠牲になるだけなんて、大ウソじゃ!

輸出業全体でもGDP比は11.5%しかない。残りの98.5%が犠牲になるなんて、大ウソ。
国内でのサービス業(GDP比20.8%)や卸売・小売業(同13.1%)の方が、日本経済で大きな比重を占めている。日本は貿易で食べている国というよりも、内需(国内の需要)でもっている国なんだ

説明: http://www.luna-organic.org/tpp/image-tpp/cat-2-1.jpg
日本経済の中で輸出の比重って
意外に低いんだニャ〜。



2.「関税なくせば輸出が伸びる」のウソ
輸出入に関わる税金が「関税」。
参加国の間で、これを全部無くしてしまおう、というのがTPPの基本だ。
TPP推進派は、関税をなくせば、輸出先での値段が安くなり、日本の工業製品が売りやすくなる、と言っている。
でもホントにそうかな?
たとえば、アメリカが日本のテレビを輸入するとき、そこにかかる税金は0〜5%、自動車の場合は2.5%
仮に1ドル100円のときに日本で100万円の自動車があるとする。100万円=1万ドル、関税の2.5%を足すと、1万250ドルになる。それが関税をなくせば1万ドル。なんだか、たいした違いじゃないような気もするね。でも少しでも安くなれば多少は売りやすくなるかな。
でも、円高になったらどうなるだろう?
1ドル90円になれば、100万円=1万1111ドル。おやおや、関税がなくなっても、円高になると、売値は高くなっちゃうぞ。
つまり現代では、関税が既に結構低いので、製品の売りやすさにはあまり関係しないんだ

説明: http://www.luna-organic.org/tpp/image-tpp/monkey-2-2.jpg
売りやすさは関税ではなく
為替にかかっとるんじゃ。

それより為替、つまり円がドルや他の通貨と比べて、高いか安いかのほうが、ずっと大きな問題なんだよ。円高になると、どうしても輸出品は売りにくくなる。
だから、関税をなくしたからと言って、工業製品が売りやすくなる、っていうのは大きな勘違いだ
今韓国製品の売れ行きがいいのは、韓国の通貨ウォンが下落しているから。2008年9月以降、ウォンが40%も下落したため、いつも4割引セールをやっているようなものなんだ。

3.「TPPでアジアの成長を取り込む」のウソ
TPPを推進したがる人たちは、「TPPに加盟することで、日本はアジアの成長を取り込める」と言っている。
でも今急成長しているアジアの国といえば、中国、韓国、インドだけど、このいずれの国もTPPに入るなんて、言ってない

説明: http://www.luna-organic.org/tpp/image-tpp/cat-2-3.jpg
これでどうやってアジアの成長を取り込むねんニャ。

TPP参加国の多くは小国で、モノを大量に買うような経済力は持ってないんだ。GDP比で見ると、アメリカが9割、日本が2割、残りの8か国で1割。つまり実質的にはアメリカと日本の2国間の協定のようなものなんだ。
ではアメリカが日本の製品をいっぱい買ってくれるようになるかというと、その可能性は低い。今アメリカの経済もものすごく落ち込んでいるからね。
それよりむしろ、アメリカから日本がモノを買わされるようになると思ったほうがいいだろう。なにしろオバマ大統領は、「今後5年間で輸出を倍増する」と2010年1月に宣言している。アメリカがTPPで輸出を大きく伸ばすとしたら、その相手は日本以外にあり得ないんだ。

説明: http://www.luna-organic.org/tpp/image-tpp/monkey-2-3.jpg
キー!
逆にモノを売りつけられるキケンの方が高そうじゃ!



4.じゃあ、どうすれば輸出が伸びるの?

過去の例を見ると、日本の輸出が伸びるのは、アメリカ国内の景気がいいとき。
なんといっても、アメリカは世界一の経済大国。人も多いし、経済力もあるから、景気がいいと、みんな金回りがよくなって、いろんなものを買う。すると、日本のモノも売れる。
でも、景気が悪くなると、みんなお金を使わなくなる。だから、日本のモノも売れなくなる。単純な話だ。
これは、アメリカ国内の問題であって、関税とは関係ない。日本人がどうにかしようと思っても、どうにもできない問題なんだ。
輸出を伸ばしたいなら、TPPよりも、円をもう少し安くする政策を考えた方がいい

第3章 TPPに入るとどうなる?

1.日本の法律が日本人を守れなくなってしまう
TPPに入ると「関税」を撤廃するだけじゃなく「非関税障壁」も撤廃しなくちゃならない。これが一番の問題だ。ところで「非関税障壁」とは?
「関税」があると値段が高くなってモノが売りにくくなる。これはモノを売りたい人にとっては「障壁」つまり邪魔モノだね。
外国にモノを売りたい人にとって、「関税」以外の邪魔モノが、すべて「非関税障壁」になる。
具体例をあげよう。
例えば、 「健康保険」というサービスを日本に売り込みたいアメリカの保険会社があったとする。ところが日本には国民皆保険制度がある。会社員やその家族は「社会保 険」に、自営業の人は「国民健康保険」に入っているから、これ以上健康保険なんて必要ない。だから、アメリカの「健康保険」なんて誰も買わない。
これは、アメリカの保険会社にとっては明らかに商売の邪魔だね。
だから、TPPに加盟すると、そのうちにアメリカの保険会社が、「国民皆保険制度を廃止せよ!」なんて言ってこないとも限らないんだ。
それでも 日本政府が国民皆保険制度を廃止しない、と言い張るとどうなるか。アメリカの保険会社は日本政府を裁判で訴えることができる。その判定をするのは世界銀行 の中に事務局がある「国際投資紛争解決裁判所」だ。この裁判所の判断基準は、自由貿易のルールに則っているかどうかだけ。それが日本人のためになるかどう かなんてまったく考慮してもらえない。そして、日本政府が負けたら、賠償金を支払うか制度を変えなければならないんだ。

キー!
なんで日本国が外国企業に指図されなあかんねん!

ということは、せっかく日本政府が日本国民を守るためにつくった制度や法律、規制などが、すべてなし崩しにされかねない、ということ。
それぞれの国の法律以上に、外国企業の利益の方が優先される、そんな社会がやってくる、ということ。
国民が選挙で選んだ代表によって法律がつくられ、実行されていくという「国民主権」が崩れてしまう、ということなんだ。

国民主権は、憲法の理念。
こりゃ憲法違反だニャ〜!
       
 自分たちがつくった法律が、外国によって勝手に変えられてしまう。これで「国」って言えるのかな?  そう考えると、TPP加盟によって、日本という国が崩壊してしまう、といってもいい。
これは、黒船来航とか、敗戦とかと同じくらい、歴史的な重大事なんだよ。


2.
TPPで医療はどうなる?
アメリカは日本に対し「病院に利益至上主義を持ちこめ」とはっきり要求してきている。TPPに参加すると同時に国民皆健康保険制度がなくなってしまうというわけじゃないけれど、真っ先に起こりそうなのは「混合診療の全面解禁」だ。
「混合診療」とは何か、まず説明しよう。
健康保険の使える医療の範囲は定められていて、最先端の医療はまだ保険の対象になっていない、という場合がある。この場合、保険の効かない医療と、保険の効 く医療を同時併用すること=混合診療をしてはいけない。もし混合診療をすると、保険の効く部分の医療まで、自費で全額負担しなければならない、ということになっている


こういう規則があると、混合診療したら医療費がとても高くなってしまう。じゃあ、混合診療はやめよう、とたいていの人は思う。これによって、保険の効かない医療の利用は抑えられている。
つまり、この「混合診療の禁止」は、最先端の医療を売り込みたい製薬会社などにとっては、まちがいなく「非関税障壁」だ。だから、きっとすぐに解禁を求められるだろう。
混合診療が解禁されると、保険の効く部分には保険を使い、保険の効かない部分は全額負担となる。一見患者の選択の範囲が広がるように見えるね。
でも、これって、よく考えると、歯医者でやってることと同じなんだ。
歯医者では、保険の効く診療と、効かない診療を同時にやっても問題ない。だから、歯医者には、保険の効かないメニューがたくさんある。歯並びをよくするための矯正や、歯を白くするホワイトニングもそうだし、虫歯の後の詰めものも、金とか、セラミックとかいろいろある。「保険は効かないですが、そのほうがきれいですよ。アマルガムじゃなくて、金にしませんか? セラミックにしませんか」とやたら勧められる。かなりしつこくすすめられる場合もあるね。
「保険の効くのでいいです」と言い張ると、ケチな客、と思われてないがしろに扱われる、そんな経験がキミにはないかな?
歯医者さんに言わせると、保険の効く診療だけでは、赤字になってしまい、経営はまったく無理なのだそうだ。だからどうしても保険の効かない診療を患者に勧めることになる。腕のいい歯医者さんになると、保険はやらない、自由診療しかしない、などという人もいる。
そういう事態が歯医者以外の病院でもきっと起こる。
日本の健康保険はただでさえ費用が膨らみすぎて問題になっているから、混合診療が解禁されれば、じゃあ保険の効く範囲を狭くしよう、というふうに話が進むのは目に見えている。
すると、保険の効く医療では最低限のことしかできない、高度な医療を受けたい人はお金はかかりますが、自由診療を受けてください、という話になる。貧乏人と金持ちとで、受けられる医療の格差がどんどん広がっていくだろう
そしてアメリカの医療保険会社は、自由診療のための保険を真っ先に売り込みにやって来るだろうね。
アメリカの医療事情は本当にひどい。公的な保険がなく、民間の医療保険が高いので貧乏な人は保険に入れない。国民全体の15%が無保険だ。
入院患者に支払い能力がないとわかると、路上に捨てていく病院すらある。
ある無保険の大工さんは事故で指を切り落として病院に行くと「薬指をつなげるのには1万2千ドル。中指をつなげるのには6万ドル。どっちにしますか?」と聞かれたという。そんな法外な額のお金が用意できなければ、つながるはずの指もあきらめざるを得ない。
そして年間4万4000人もの人が、保険に入っていないがために、医者にかかれずに死んでいく……。

カネがないために医者にかかれず死なねばならんとは・・・
胸がつぶれる思いだニャー・・・・
  
これがアメリカのいう「利益至上主義」医療の実態だ。
TPPに加盟したら、日本の医療もその方向へ、じわじわと進んでいくことになる。


3. TPPで賃金が下がる
TPPに加盟すると「労働力の移動」も自由化される。
するとTPP加盟国からの労働者が日本にどんどんやって来る。
例えば、ベトナムの労働者の最低賃金は月給で83万ドン〜155万ドン(地区などの条件によって違う)。これを日本円に換算すると3057円〜5709円と、メチャクチャ安い。
まあ、ベトナム人といえども、日本で働くなら、日本でご飯食べたり、家賃払ったりしなきゃいけないわけだし、飛行機代(もしくは船賃)かけてやって来るんだから、ベトナム国内と同じ値段で働くというわけにはいかない。日本には日本の最低賃金もあるしね。
でも、日本人にとってはサイテーの給料でも、彼らにとっては大きな魅力。安い給料でも働いてくれる人が増えれば、企業はわざわざ高い給料なんか払わない。こうして賃金の相場はだんだんに下がっていく
               
ワーキングプアのワシをこれ以上貧乏にするのはやめてくれ!

給料の安い外国人に職を奪われて、日本人の失業はどんどん増えるだろう。
ちなみに、カナダ、アメリカ、メキシコの間で自由貿易協定NAFTAが結ばれたことで、アメリカ国内では50万人もの人が失業したんだよ。


4. TPPでデフレが進む
安い給料で働く外国人が日本にたくさん入ってくれば、給料の相場が下がる。
給料が下がると、経済的余裕がなくなって、みんなモノを買わなくなる。
高いモノは売れないから、売ろうと思ったら、値段を安くしなくちゃならない。
こうして値下げ競争でデフレがさらに進んでいく。
デフレっていうのはモノの値段がだんだんに下がっていくこと。
その反対はインフレだ。
日本ではもう10年以上もデフレが続いている。
インフレが激しすぎても困るが、デフレも決していいことじゃない。
みんなが節約に一生懸命になり、お金を使わなくなると、世の中にお金が回らなくなって、経済が停滞してしまう。
モノが安くなっていいような気がするかもしれないけど、自分の給料も安くなるから結局買いたいものが買えないんだ。
給料安いから節約!節約!
ちっともモノが売れんニャー。
しゃあない、値下げするか。

値下げしたから利益が減ったなあ。しかたない、従業員の賃金カットじゃ。

キー!また手当が減ったぞ!これじゃ暮らしていけん!
これがデフレスパイラル

みんながモノを買わなくなると、工業製品も売れなくなる。だから、農業だけじゃなく、TPPで工業も衰退してしまうよ。



5.
「投資」の国境がなくなると
TPPに参加する!とアメリカが言い出してから、TPPの交渉分野に新たに追加された2項目がある。それが「投資」と「金融」だ。どうやらこの2つはアメリカにとって重要そうだね。
投資っていうのは、利益を得ること=つまり金儲けの目的で、株を買ったり、事業にお金を使ったりすること。投資を回収し(つまり使ったお金を取り戻し)、さらに、使った以上のお金を儲けることが目的だ。
外国企業が自由に投資できるようになるとどうなるか?
そのいい例が、カナダの食品加工会社だ。
アメリカとカナダは1989年に協定を結んで投資を自由化した。
その結果、10年も経たないうちに、カナダの食品加工業界はアメリカに乗っ取られてしまったといってもいい。

1997年のカナダ農産物加工会社におけるアメリカ企業の割合
小麦製粉71%
麦芽製造87%
油糧種子加工86%
輸出牛肉加工70%

協定を結んでから、カナダからの農産物輸出は3倍に増えた。
でも、逆に農家の収入は24%も減ってしまったんだ。
一見産業が盛んになるように見える場合もあるけれど、もうかるのは大金持ちの投資家ばかりで、庶民はお金を搾り取られて、結局貧乏になっていくことがわかる。
    
設けが増えたぞ! ウッホッホ!
働けど楽にならザル我が暮らし・・・

儲かるのは投資家だけ。
庶民は搾取されるのだニャ〜

投資の自由化は、大企業の利益を伸ばす反面、庶民の搾取につながっていく

それこそがアメリカにとってのTPPの目的だといってもいいだろう。


6.「金融」の国境がなくなると…

「金融」の国境を取り払う、ってどういうこと?
日 本人が貯金や共済として預けたお金は、その金融機関の倉庫に眠っているわけじゃない。金融機関はそのお金を、他の人や会社に貸し付けたり、株や不動産など に投資したりする。これを「資金の運用」と呼ぶよ。倉庫に眠らせてたらお金は増えないけれど、運用すれば利子を取ったり、株の配当をもらったりできて、だ んだん増えていくからね。
資金の運用は、できるだけ日本国内でされたほうがいい。日本国内でお金が回れば、日本の景気がよくなるからだ。とはいっても、金融機関は一番儲かりそうだと思うところに投資するから、その投資先が海外になることも当然ある
でも、これだけは日本国内で運用しなきゃダメ! と決められていたものがある。たとえば、「ゆうちょ」(郵便貯金)、かんぽ(郵便局の簡易保険)、農協共済
こうした規制はやはり「非関税障壁」だ。
その決まりさえなくなれば、これらの莫大な資金がウォール街(証券会社や銀行が集中しているアメリカの街)に流れ込む。そして、ウォール街の連中の儲けが増える。これがアメリカの狙いだ。

説明: http://www.luna-organic.org/tpp/image-tpp/gorilla-3-6-money.jpg
ウッホッホ!
いいように食いモノにしてやるわい!

でもその代わりに日本国内でお金が回らなくなるから、日本経済はますます停滞しちゃうよ。

第4章 なぜ日本は加盟したい?

1.企業の海外進出が有利に
TPPは日本の一般的な市民にとって何一つメリットのない協定だ。
それがわかると、今度は別の疑問が浮かんでくる。
一体なんでそんなものに、日本は加盟しようとしているのか、ということだ。
TPPに加盟しよう!と一番勢い込んでいるのは「経団連(日本経済団体連合会)」という団体だ。
経団連は日本の大企業の集まりで、その会長はいわば財界のボスのようなもの。大企業に都合のいい政策を取るように政府に働きかけるのが役割だ。その経団連が「日本はTPPに加盟するべきだ」と執拗に政府に迫っている。
ちなみに経団連の現会長は住友化学会長。
副会長はたくさんいて、その所属企業は全日空、三井不動産、トヨタ自動車、東芝、新日鉄、日立、小松製作所、NTT、三菱商事、三菱東京UFJ銀行、丸紅、JR東日本、第一生命、三井住友フィナンシャルグループ、日本郵船、三菱重工。

説明: http://www.luna-organic.org/tpp/image-tpp/keidanren.jpg
経団連会長の所属企業 住友化学
経団連副会長の所属企業
製造業・トヨタ自動車、東芝、日立、新日鉄、小松製作所、日本郵船、三菱重工
金融機関・第一生命、三菱東京UFJ銀行、三井住友ファイナンシャルグループ
商社・三菱商事、丸紅
運輸・全日空、JP東日本
他・NTT、三井不動産

こうした企業がTPP加盟に賛成する理由はいくつかあると思う。
たとえば、大手の製造業なら、いろんな材料や部品を外国から輸入しているが、その際に関税がなくなれば原料費が抑えられる。
また、外国から安い賃金で働く労働者が入ってくれば、人件費を安く抑えられるかもしれない。
でも日本にいる限りは最低賃金の足かせは外せない。それよりもっとずっと人件費を安く抑える方法がある。それは海外へ工場を移転してしまうことだ。
ベトナムあたりに行けば、人件費はずーっと安い。しかもたいていの発展途上国では排水や排ガスなどの環境基準が、日本よりもかなり緩い。労働者を安く使えて、環境を汚しても、文句を言われない。これは企業にとってはオイシイ話だ。
そんなオイシイ海外進出を、よりスムーズにしてくれるのが、TPPなんだ。
TPPに加盟すると、進出してきた外国企業を、国内の企業とまったく同様に扱わなければならない(これを「内国民待遇」と呼ぶよ)。
例えば、 今ベトナムでは外資系企業と国内企業とで最低賃金が違う。もちろん外資系企業の方が高い賃金を払わなくちゃいけない。外資系企業はどうせ金持ちなんだから たくさん払ってくださいよ、ということだ。経済格差を考えたら、当然の発想ともいえる。それに国内企業を保護する意味合いもある。小さな発展途上国の企業 は当然規模も小さいだろうし、競争力も弱いだろう。それと外国企業を対等の条件で競わせたら、負けてしまう。だから外国企業には多少ハンデをつけておこ う、というわけだ。国が自国民や自国の企業を守るために働くのは、当然のことだからね。
説明: http://www.luna-organic.org/tpp/image-tpp/monkey-gorilla-4-1-fair.jpg
対等に勝負しようぜ!
ひ、ひぇ〜

ところが、こうした外資系企業と国内企業との間にハンデをつけるような政策は、TPPが成立したらもう許されない。「内国民待遇を犯している」「外資系企業の差別だ」として、政府が外資系企業に訴えられてしまうんだ。
だから、TPPに加盟しておけば、企業にとってはオイシイ海外進出が、ますますオイシクなるというわけだ。
外資系企業が「内国民待遇」というお題目のもとで、どんなことができるようになるか。NAFTA(北米自由貿易協定)で実際に起こった例を見てみよう。
アメリカの企業クラッド社は、メキシコで産業廃棄物を処理しようとした。環境の悪化を懸念する声が高まり、地元自治体は処理の許可を取り消した。するとメタルクラッド社は「不利益を被った」としてメキシコ政府を訴えた。

説明: http://www.luna-organic.org/tpp/image-tpp/gorilla-4-1.jpg
一旦は許可したくせに今さら取り消すとは何事だ!
俺様に損をさせる気か!
俺がなんのために投資したと思ってるんだ!儲けさせろ!
何があっても好きなようにさせろ!

裁定は、メキシコ政府がクラッド社の「内国民待遇を犯した」ことを認め、1670万ドルもの賠償金の支払いを命じた……。

説明: http://www.luna-organic.org/tpp/image-tpp/monkey-4-1-tax.jpgキー!
わしらが苦労して収めた税金がなんで環境を悪化させるような企業のために使われねばならんのか!

何かあったら、なんでも「外資系企業への差別だ!」「内国民待遇を犯している!」と言ってゴネて、ゴリ押しできるようになる、ってことかな。
アメリカのコメディ映画で、会社をリストラされそうになった男性が突然「僕はゲイだ」「これはゲイへの差別だ!」と騒ぎ立ててクビになるのを免れる(本当はゲイじゃないのに)というのがあるんだけど、なんだかそれと似たようなムチャクチャさだね。
とにかく、企業は海外でそんなゴリ押しができるようになれば、何かトラブルが起こっても損をすることはないから安心だ。TPPは企業が海外展開する際に損をしないようなしくみを保証してくれるものなんだ。
つ いでに言っとくけど、外資系企業を差別するのはおかしい! とか、商売は対等な条件でさせろ! とか、そんなの、フェアじゃない! とか主張する人もいる んだけど、それはチャンチャラおかしい。繰り返すけど、国が自国民や自国の企業の利益を守るのは当然のこと。それこそが国の役目じゃないか。
大企業は自分たちに都合のいい考え方を人々に吹き込むために、「差別はよくないこと」「フェアであることが大事」「自由であることはよいこと」といった基本的な価値観を利用してうまく言葉を選んでくる。それにだまされちゃいけないよ。


2.
日本の金融機関ももうかる
経団連の副会長には三菱東京UFJ銀行の会長と、三井住友フィナンシャルグループの会長も入っている。経団連がTPPを推進したいのは、参加企業に金融機関が多いというのも理由だ。
金融自由化と円高を利用すれば、日本の金融機関は海外の金融機関を食いものにできる

      
ウッホッホ!
円高だから買い得じゃ!

それに日本の郵貯と簡保(350兆円)、農協共済(45兆円)など、莫大な資産を食いものにできるのは、アメリカの金融機関だけじゃなく、日本の金融機関も同じだ。一般市民には何の得にもならないけれど、大企業だけは得をする、という構図は、アメリカでも日本でも同じなんだ


3.商社は表示の“自由”度が広がる
経団連には商社も多く、副会長には三菱商事と丸紅の会長が入っている。
商社は貿易が仕事だから、TPPによって関税がなくなれば、さらに安くモノが輸入できるようになって、確かに繁盛するかもしれない。
また、通関にかかる時間が短くなったり、植物や生鮮食品の検疫が簡単になったりもするようなので、それも商社にとってはうれしいポイントだろう。
さらに彼らにとってオイシイ話がある。それは商社にとって有利な「原産地表示」ができるようになるということだ。
TPPでは、いくつかの国の部品や材料をあわせてモノをつくる場合、モノの値段の45%以上の部品や材料がTPP加盟国でつくられている場合は、TPP加盟国で生産されたものとみなすことになっている。
たとえば化粧品をつくるとき、日本の材料が商品の値段の45%以上を占めていれば、中国でそれを混ぜ合わせて加工しても、「メイド・イン・ジャパン」と表示できる。

説明: http://www.luna-organic.org/tpp/image-tpp/cat-4-3-cheated.jpg
なんだかだまされてるみたいだニャー

「メイド・イン・ジャパン」の化粧品は高級なイメージがあって、アジアでは庶民の憧れの的といったところだ。対する「メイド・イン・チャイナ」は……。この違いは決定的といってもいい。
TPPに加盟すれば、こんなまやかしも、合法になってしまうんだ

第5章 TPPでは幸せになれない

TPPでは幸せになれない
自由貿易は失業の輸出でもある(→第9章参照)。
実際に貿易、投資等を自由化したNAFTA(北米自由貿易協定)では、大量の失業者が生まれた。
NAFTAが成立するとアメリカ企業は人件費の安いメキシコにどんどん移転した。そのおかげでメキシコ国内では工場での雇用が増えた。けれども工場が減ってしまったアメリカでは、当然ながら失業者が増えた。

説明: http://www.luna-organic.org/tpp/image-tpp/gorilla-5-1-move.jpg
工場を移転することにした。
キミは今月限りでクビだ。
サッサと人件費の安い場所に移って、さらに設けるぞ!
ウッホッホ!
ミャ〜ン、失業だヨー!

それにアメリカが補助金つきの安い農産物を大量にメキシコに輸出するもんだから、メキシコの農民は価格競争に負けて、大勢の農民が農業をあきらめざるを得 なくなった。農家をやめて新しい職を探しても見つからない。そんな人の一部は移民となってアメリカへ渡った。そして、さらにアメリカ国内での失業は増え た……。
こうして、メキシコでは約200万人、アメリカでも約50万人が失業したといわれている。
つまりNAFTAやTPPなどの自由貿易協定、経済協定を結んでも、利益を得るのは大企業のトップだけ。一般庶民は豊かになるどころか、逆に失業や賃金の低下で苦しめられることになる。社会全体にとってはちっともプラスにならないんだ。
今アメリカの失業率は白人で8%、黒人では16%にものぼる。貧しさゆえに政府から食費の補助を受けている人(フードスタンプ受給者)は、2000年以降どんどん増えて、今では4700万人もいる。これはアメリカの人口の15%だ。
経済の指標となるGDP(国内総生産)は上がっていくけれど、国民は豊かになっていかない。逆に貧しい人が増えていく

説明: http://www.luna-organic.org/tpp/image-tpp/gdp-of-america.jpg
アメリカのGDPの推移  (単位:10億ドル)

これはアメリカも日本も同じだ。

説明: http://www.luna-organic.org/tpp/image-tpp/gdp-of-japan.jpg
ニッポンのGDPの推移
(単位:億円)

国全体の経済と一般庶民の給料とが比例して伸びて行った時代は終わった。
日本でもGDPはじわじわと上がり続けているけれど、日本人の平均年収は1997年(平成9年)からほぼ下がる一方になっている。

説明: http://www.luna-organic.org/tpp/image-tpp/salary-of-japanese.jpg
日本人サラリーマンの平均給与

これは大企業だけが利益をむさぼって、庶民は搾取されているということだ。だから日本でこんなにワーキングプアが増えてしまったんだ。
そんな格差社会をより一層進めるのがTPPだ。
オバマ大統領も就任前はNAFTAを批判し、将来決してNAFTAのようなスタイルの協定は結ばない、と明言していた。それなのに今TPPを成立させようとしていることで、良識あるアメリカ国民からも反撥を買っている。
NAFTAがよい結果を生まなかったとわかっているにも関わらず、オバマ氏がTPPを成立させようとするのは、大統領でさえ既に大企業の力を抑えきれないからだろう。日本の政治家も経団連の言いなりだ。
でも、ここで日本がTPPに加盟してしまったら、大企業はますます大きな力を手に入れ、日本という国家を超えた権力を持つようになってしまう

「グローバリゼーション」という 言葉をキミは聞いたことがあるだろう。直訳すると「地球規模化(あるいは世界規模化)」。人、モノ、金、情報の移動が世界規模になり、世界の境界がなく なっていくこと、という程度に日本では理解されている場合が多い。国境を越えて世界がひとつになるなんてすばらしい、といい意味に解釈している人もいるだ ろう。
でも、欧米ではこの言葉は通常、悪い意味で使われる。
巨大多国籍企業が、国境を越えて事業を展開し、世界中から富をむさぼる。そしてときに国家を超えた強大な権力を持ち、人々を抑圧し、搾取する。それがグローバリゼーションだ。

説明: http://www.luna-organic.org/tpp/image-tpp/gorillas-5-1-globalization.jpg
もう国民を守ってやることもできんのじゃ
助けて!

TPPはこの悪い意味でのグローバリゼーションを強力に推進する協定だ
大企業が自分に不都合なことはすべて「非関税障壁だ、撤廃しないと訴えるぞ」「外国企業への差別だ! 訴えるぞ」と脅してゴリ押しし、国の法律まで捻じ曲げてしまうことができるようになる。国家以上に巨大な権限を企業に与えてしまうんだ。
こんな理不尽で異常な協定を、絶対に成立させちゃダメだ。
経団連がTPP加盟を急ぐのは、急がないとウソがばれちゃうとわかっているから。
全速力でそのウソをばらそう!
日本国が終了してしまう前に!

第6章 わたしたちにできること

日本のTPP参加を食い止めるためには、まずこの情報を周りの人に伝えること。
友達に話す。
メーリングリストやツイッター、フェイスブックなどで広める。
仲間を集めて、勉強会を開くのもいい。
でも、日本は11月にハワイで行われるAPECで参加交渉に入ると見られているから、その前までに反対運動を盛り上げなくちゃいけない。残された時間はとても少ない。
もうひとつ、ぜひやってほしいのが、自分の選挙区の国会議員に直接会って訴えるという方法だ。
え? 会ってくれるの? そんなこと、やったことないよ。という人がほとんどだろう。
でも大丈夫。
国会議員は 選挙区から選ばれた代表だ。 国民の声を議会に反映させるのが仕事なんだ。だから、国民の声を聞く義務がある。
それに、自分の選挙区の有権者というのは、国会議員にとってはお客さんだ。次の選挙で自分を選んでくれなかったら、選挙に落ちて、失業してしまう。
だから有権者の顔色を伺わざるを得ないんだ。

説明: http://www.luna-organic.org/tpp/image-tpp/monkey-6-1.jpg
議員にとって有権者がお客さんんじゃ。
 
まずインターネットで自分の選挙区を調べ、その選挙区から選ばれた国会議員を調べよう。衆議院と参議院と両方ある。
その国会議員の地元事務所もインターネットで調べられるはずだ。
電話して、自分の住所を言い、TPPに関して意見を伝えたいので、議員に面会したいと求め、予約を取ろう。
できれば同じ選挙区の仲間を何人も連れて行けたらいいね。

説明: http://www.luna-organic.org/tpp/image-tpp/cat-6-1.jpg
議員訪問、初体験はドキドキ!
でも一回行ってしまえばなんてことはないのだニャ〜。

そして、TPPに入ると大きなデメリットがあることを訴え、TPPに参加しないように伝えよう。
できれば紙に要点を書いていき、それを見ながら説明しよう。
そしてこの意見を党内に、あるいは国会に,、どんなふうに反映してくれるかを尋ねよう。
そして、その結果の報告も求めよう。
国を動かすのは最終的には国会議員なので、デモよりも署名よりも、国会議員に直接会うのが大きな効果があると言われている。
メールやファックスも効果がないとはいわないけれど、でももしかしたら見ないで終わってしまう可能性もある。直接会うインパクトにはかなわないんだ。
だから、勇気を出して行ってみよう。
日本という国を戦後最大の危機から救うため、一緒に立ち上がろうよ!
詳しくは、「今すぐ行動!」のページを見てくれたまえ。

第7章 TPPと遺伝子組換え

1.表示が「非関税障壁」に
日本がTPPに加盟すると、食べたくもない遺伝子組換え食品を食べさせられるようになる危険性が高い。
その理由を説明しよう。
納豆とか豆腐の原材料欄に「大豆(遺伝子組換えでない)」っていうのを見たことがある人は多いと思う。
でもその逆に、「大豆(遺伝子組換え)」っていう表示を見たことのある人がいるかな?
たぶん、誰もいないと思う。
なぜそうした表示がないかというと、遺伝子組換え作物が安全なのかどうか、みんなが漠然と疑問や不安を持っていて、表示があると誰も買わないからだ。
これは嘘の表示をしている、っていう意味じゃあないよ。
大豆や納豆には遺伝子組換え大豆は使われていない(原則的には)。
でも、日本は遺伝子組換え大豆をいっぱい輸入している。
じゃあ、遺伝子組換え大豆はどこに使われているんだろう?
それを考える前にまず日本にどんな種類の遺伝子組換え作物が輸入されているかを確認しよう。
一番多いのはとうもろこしだ。次が大豆、そして、なたね。最後が綿実。
本当はじゃがいも、てんさい、アルファルファも輸入が許可されているけれど、実質的には全く流通していない。
実際に輸入されている遺伝子組換え作物は上の4種類だけだ。
この4種類の作物には、ある共通点がある。それは一体なんだと思う?
それは、食用油の原料になる、ということだ。
日本では原料に遺伝子組換え作物を使った場合、それを表示しなくてはならない。でも、
「組換えられたDNAや、それによって生成するタンパク質が製品に含まれない場合は、表示しなくてもよい」という決まりがあるんだ。(これが妥当な決まりかどうかは別の話だよ)
油には組換えDNAが残らない。だから、原料のとうもろこしや大豆、なたね、あるいは綿実が遺伝子組換えのものであっても、油の原材料欄にそのことを表示しなくてもいい、ってことになっている。
みんなが食べているサラダ油(大豆油とコーン油の混合である場合が多い)、コーン油、キャノーラ油(=なたね油)、綿実油などは、ほとんどが遺伝子組換え原料のものであると考えた方がいい。

説明: http://www.luna-organic.org/tpp/image-tpp/monkey-7-1-oil.jpg
キー!
  サラダ油のほとんどが遺伝子組替え原料だったとは!

ということは、サラダ油をつかってつくるマヨネーズも!
    
揚げ物に使われている油や、マヨネーズ、マーガリン、ショートニング(植物油を化学的に変化させて固体にしたもの。クッキーやパンなどによく入っている)なども、ほとんど遺伝子組換え原料の油だと考えていいだろう。
でもほとんどの人はそんなこと知らないから、遺伝子組換え原料の油を平気で買って揚げものや炒めものに使っている。あるいは遺伝子組換え原料の油が使われた揚げものやパンやお菓子を平気で買って食べている。

説明: http://www.luna-organic.org/tpp/image-tpp/cat-7-1-oil.jpg
表示がないからちっとも知らずに遺伝子組替え原料の油を食べとったニャ〜
パンに含まれるマーガリン、お菓子の中のショートニング、揚げ物の揚げ油

つまり「表示」はそれだけ大きな意味を持つということだ。

表示があれば、誰も遺伝子組換え食品なんか買わない。
表示がなければ、気が付かないから食べてしまう。
消費者は「表示」によって守られている、といっていいんだ。
さあ、ここでもう気が付いたかな?
遺伝子組換え作物を売りたいアメリカの企業にとっては、この日本の表示制度は紛れもなく「非関税障壁」だ。
日本がTPPに加盟したら、必ず「表示制度をなくせ」って、イチャモン付けてくるに相違ないぞ。
日本と違ってアメリカには遺伝子組換えの表示義務はないからね。
表示がなくなれば、消費者に選ぶ権利はなくなる。
豆腐も納豆も遺伝子組換えのものかどうかわからないまま食べさせられるようになってしまうかもしれないんだ。


2.遺伝子組換え作物は安全なの?

ちなみにアメリカでは、遺伝子組換え作物であるかどうかの表示義務はないが、任意でNon-GMO(非遺伝子組換え)という表示はしてもいいらしい。
でも、“GMO-Free”という表現は禁止なのだそうだ。
なんとかFreeというのは、アルコールフリーとか、コレステロールフリーとか、何か悪いものが入っていないことをアピールするときに使う表現。だからGMO-Freeと書くと、あたかもGMO(遺伝子組換え)が悪いもののようなイメージを与えるからダメ、というのがその理由だとか。
それって、まるで遺伝子組換え作物が悪くないもの、安全なものだと言わんばかりの言い分だね。一体、本当にそうなんだろうか。
1998年、イギリスのローウェット研究所のパズタイ博士は、ネズミに遺伝子組換えじゃがいもを食べさせる実験を行った。

説明: http://www.luna-organic.org/tpp/image-tpp/doctor-pusztai-7-2.jpg
アーパド・パズタイ博士

その結果、ネズミには、免疫力の低下や内臓の障害(膵臓の重量低下、内臓細胞の増殖、肝臓の重量低下、胃の粘膜が厚くなる)がはっきりと認められた
博士は早速テレビ会見でこのことを発表した。「遺伝子組換え研究に携わる科学者として、イギリス国民をモルモット代わりに使うのはきわめて不当だといわざるを得ません」とまで言ったんだ。なぜなら、その2年前から遺伝子組換え作物は既に市場に出回っていたからね。
世界中のテレビ局から研究所に問い合わせが殺到した。ところが、研究所では博士のコンピュータにロックをかけ、データを没収、2日後には博士はクビにされてしまった。
この「パズタイ事件」は遺伝子組換えの闇を象徴する有名な事件だ。
なんでそんなことになったんだろう?
誰が手を回したんだろう?
遺伝子組換え作物が安全でない、とされ、売れなくなったときに困るのは誰か?
そう考えればすぐにわかる。
それは遺伝子組換え種子のトップ企業、モンサント社だ。
「遺伝子組換え作物は安全性に疑問がある」と発表する学者がいると、モンサント社はかたっぱしから裏から手を回して失脚させる。その手口によって、世界中で何人もの良心的な学者が失脚させられているよ。

説明: http://www.luna-organic.org/tpp/image-tpp/cat-gorilla-7-2.jpg
学者としての良心に従って研究発表しただけにゃのに・・・・
オレ様に逆らうものは学界から追放だ!

アメリカにはFDA(アメリカ食品医薬品局)という政府機関があって、食品や薬の安全性を審査することになっている。ところがアメリカには俗に「回転ドア」と呼ばれるシステムがあって、政府機関と民間会社との間を人が行ったり来たりしている。だから日本の天下り以上に、政府と民間会社との癒着がひどいんだ。例えばラムズフェルト元国防長官は、もともとはモンサントの子会社サールのCEOだった。そんな状態で、本当に国民の側に立った安全性の審査ができるわけはないよね。


3.遺伝子組換え作物の栽培が始まると

国内では遺伝子組換え作物の商業栽培はまだされていない。
でも、栽培を禁じる法律があるわけじゃないんだ。
農水省にはいろんな遺伝子組換え作物の栽培許可申請が出されていて、既にたくさん認可されている。でも試験的に栽培されているものはあっても、まだ商業栽培はされていない。
それは、栽培しても売れる見込みがないからだ。
国産の大豆は輸入大豆よりも値段が高くなる。それを油の原料にしちゃうんじゃ割が合わない。でも、遺伝子組換え大豆でつくられた豆腐や納豆や豆乳は、そう表示されるから誰も買わない。誰も買わないものをつくってもしょうがないから、誰も栽培しない。
つまり遺伝子組換え作物の栽培を食い止めているのも、やはり「表示」だと考えていい。
表示義務がなくなれば、みんな知らずに遺伝子組換え大豆の豆腐や納豆を食べるようになる。そうすれば遺伝子組換え大豆はもっと売れるようになり、国内での栽培はまたたく間に広がるだろう。
でも、遺伝子組換え作物の栽培は、いったん始めてしまうと、取り返しのつかないことになる
花粉は風にのって広がるものだからだ。
在来のナタネをつくっていても、隣の畑から遺伝子組換えナタネの花粉が飛んできたら、それを受粉して交雑してしまう可能性が高い。在来の菜種を栽培している農家にとってはいい迷惑だ。こんなとき、モンサント社はどうするか? 賠償する? 謝る? とんでもない。逆にその農家を訴えるんだから、いい性格だね!
カナダのナタネ農家、シュマイザーさんの例を紹介しよう。
シュマイザーさんは広大な農場で何十年もナタネを栽培してきた。丈夫でたくさん収穫できる品種を自分で長年かけて育ててきたんだ。遺伝子組換えナタネなんて、栽培しようと思ったこともない。

説明: http://www.luna-organic.org/tpp/image-tpp/percy-schmeiser-7-3.jpg
パーシー・シュマイザー氏
                      
そんなある日突然、シュマイザーさんは手紙を受け取った。手紙には「あなたは我がモンサント社の遺伝子組換えナタネを無断で栽培している。特許使用料を払うように。もし払わなければ裁判所に訴えるぞ」と書かれていた。まるで脅迫状だね。
モンサント社は自分が開発した組換え遺伝子を「知的財産」だとして「特許権」を主張している。でも、生命を構成する遺伝子というものに特許権を主張するなんて、自然に対する冒涜じゃないかい? が、その話はひとまず置いておこう。
シュマイザーさんは自分の畑に遺伝子組換えナタネのタネなんか撒いてない。よその畑から飛んできた花粉で交雑が起こったということだ。
しかしなんでモンサント社にはそのことがわかったのか? それはモンサント社の私設警察モンサント・ポリスが勝手にシュマイザーさんの畑に入って、ナタネを盗み出して分析したからだ。泥棒しておいて、人を訴えるんだから、まさに盗っ人猛々しいとはこのことだ。
シュ マイザーさんはその手紙を読んで頭に来た。誰が特許使用料なんか払うものか。断固闘うぞ! と裁判に打って出たんだ。でも、裁判の行方はえてして弁護士費 用をどれだけ用意できるかで決まってしまうもの。巨大多国籍企業に一介の農家は勝ち目がなかった。シュマイザーさんは裁判に負けてしまったんだ。「モンサ ント社の品種が一定程度畑にあれば、特許権侵害に当たる」「シュマイザー氏の畑の収穫物も、種子も、すべてモンサント社のものである」という判決が下った……。
でも、それでも シュマイザーさんはめげなかった。新たに別の裁判を起こして、逆にモンサント社を訴えた。「わたしの土地はわたしの財産だ。わたしがこの土地の税金も払っ てるんだ。そこにおまえらの財産を放置するとは何事だ。おまえらの責任で片付けろ」とね。もっともだよね! さすがシュマイザーさん。そして、最終的には 裁判で和解に持ち込めた。
とはいえ、シュマイザーさんほど頭が切れ、裁判にかける費用も時間もあり、ヤクザ並みの脅しやありとあらゆる嫌がらせに負けない根性もある、というスーパーマンのような農家は少ない。
モンサント社はアメリカやカナダで何百件もの農家を特許権の侵害で訴え、たくさんの農家がそのせいで破産しているよ。

説明: http://www.luna-organic.org/tpp/image-tpp/gorilla-7-3.jpg
オレ様と闘って勝ち目があるとでも思ってるのか!
キー! 悔しいが・・・
泣き寝入りするしかにゃいのか・・・



4.食料による世界支配
一方、インドでは大勢の農家が自殺している。モンサント社の遺伝子組換えワタのせいだ。
遺伝子組 換えワタのタネは在来のワタのタネの何倍もする。農民は高価なタネを買うために、借金をせざるを得ない。収穫できたワタを売ってやっと借金を返すという生 活だ。ところが「楽に高い収穫量が得られる」という触れ込みに反して、思い通りの収穫が得られなかったり、とんでもない不作になることすらある。そして借金が返せず、自殺する農民が急増しているんだ。
なぜ農民は高価な遺伝子組換えワタのタネをわざわざ買うのか。それはモンサント社が地元の種苗会社を買収してしまったために、在来のワタのタネが手に入らなくなってしまったからだ。そうやってモンサント社は否応なく農家を囲い込んでいく。
シュマイ ザーさんは裁判ではモンサント社の鼻をあかしてやったけれども、結局ナタネの栽培はあきらめてしまった。なぜなら、在来のナタネを栽培しようとしても、ど うしてもモンサント社の遺伝子と交雑してしまうからだ。不屈の闘志を持つシュマイザーさんでさえ、認めざるを得なかった。在来のナタネはカナダからもう永久に失われてしまった、とね。

説明: http://www.luna-organic.org/tpp/image-tpp/monkey-7-4-farmer.jpg
キー!
なんでつくりたくもない遺伝子組替え作物を栽培せねばならんのじゃ!

遺伝子組換え表示がなくなれば、遺伝子組換え作物の栽培はすぐに広まるだろう。そしてわたしたちは非遺伝子組換えの食品を選ぶ自由が奪われ、農家は自分のつくりたい品種を選んで栽培する自由を奪われる。
「食料主権」が、わたしたちの手から奪われてしまうんだ。

説明: http://www.luna-organic.org/tpp/image-tpp/cat-7-4-consumer.jpg
どれが遺伝子組替え食品かもわからないようにして食べさせられるなんてまっぴだニャ!

モンサント社の究極の狙いは、タネを握って、食料を支配すること。それによって世界を支配することだ。電気がなくても人間はすぐに死ぬわけじゃないけれど、食料がなければ生きていけないからね。

説明: http://www.luna-organic.org/tpp/image-tpp/gorilla-7-4-rule-the-world.jpg
世界はオレのもんだぜ
  ウッホッホ!

も しキミが、こんなふうにエゴと搾取で成り立つ資本主義社会にうんざりし、きっぱりと決別して、山の中で自給自足の生活に入ったとしよう。畑を耕して、自然 の中で心豊かに生活していたとしよう。でもある日そこにモンサント社がやって来て「あなたは我が社の著作権を侵害しています。特許使用料を払ってもらわな いと」……
説明: http://www.luna-organic.org/tpp/image-tpp/monkey-gorilla-7-4.jpg
ま、まさかここまで来るとは!
オレ様から逃げられるとでも思ってるのか!
まるでホラー映画のような展開だニャ〜

そんな悪夢のようなの未来はイヤだと思ったら、今TPPに反対するしかない。   
遺伝子組換えと原発は似ている。
いったん原発事故が起こると飛散した放射性物質は回収しようがない。
遺伝子組換え作物の花粉も、飛び散ってしまってからでは遅いんだ。

第8章 経団連会長とTPPの関係

経団連の米倉弘昌会長は、住友化学の会長でもある。
そして、住友化学はモンサント社と業務提携をしている。
だから、日本がTPPに加盟すると、
→非関税障壁の撤廃要求によって、遺伝子組換え表示制度がなくなる
→遺伝子組換え食品が食卓に蔓延
→遺伝子組換え作物の栽培が日本でも盛んに
→モンサント社が儲かる。
→業務提携をしている住友化学も儲かる。
→米倉会長ウッホッホ、というわけ。

説明: http://www.luna-organic.org/tpp/image-tpp/gorillas-8-1-hands-in-hands.jpg
ウッホッホ!
ウッホッホ!

ちなみにこの住友化学という会社がどういう会社か少し紹介させてほしい。
この会社は、名前に「化学」とついているように、化学薬品、農 薬、殺虫剤などをつくっている。そして、アフリカの貧しい地域のマラリヤ予防に最適、などと称して、殺虫剤を繊維に練りこんだ蚊帳を開発し、日本政府の ODA(政府開発援助)予算を獲得して、それを大量生産し、配布している。
しかし、よく考えほしい。
なんで蚊帳に殺虫剤が必要なんだ???
殺虫剤なしで快適に過ごすための知恵が蚊帳だろうが。
無駄っ!
おまけに、健康にも悪影響がある。
蚊帳に練りこんだ殺虫剤、ペルメトリンは子どもの脳の発達を妨げたり、発がん性があることも指摘されている。
それなのになんで殺虫剤入りの蚊帳なんだ?
殺虫剤が入ってなくちゃいけないのは、もしそうじゃないと、殺虫剤メーカーである住友化学が受注する必然性がなくなってしまうから。
他の理由なんか考えられないじゃないか。

説明: http://www.luna-organic.org/tpp/image-tpp/gorilla-8-1-profit.jpg
ウっホッホ!
マラリヤ予防にかこつけて、殺虫剤需要の掘り起こしに大成功だ
子どもの脳の発達よりわが社の利益の方が大切じゃからな

しかも、その予算に国民の税金が使われていて、国連のユニセフや、JICA(国際協力機構)もその配布に協力している。
アフリカの貧しい人々のために社会貢献します、みたいな顔しながら、税金を無駄づかいし、実際には現地の人々の健康を蝕む。
説明: http://www.luna-organic.org/tpp/image-tpp/cat-monkey-8-1.jpg
これって結局健康のためになってニャいじゃないか!

キー!
われわれの税金をこんな有害無益な事業に使うな!

そんな大企業と、国や公的機関がつるんでいる……というのも原発をめぐる利権の構造と似ているね。
日本政府のODAの多くはこんな風に利用されている。つまり発展途上国の人々のために見せかけて、実際は日本企業の利益のために使われているんだ。

第9章 自由貿易について考えよう

1.貿易は自由なほうがいい?
「自由」っていう言葉には良いイメージがあるよね。
束縛されるのはイヤ、自由になりたい! みたいな。
しかも、新聞の社説なんかを見ると「貿易自由化は時代の流れ」とか「貿易自由化によってこそ、両国はともに継続的に発展できる」なんてよく書いてある。
でも、本当にそうなのかな?
「自由貿易」を推奨したのはイギリスの経済学者リカード(1772-1823)という人だ。
リカードの「比較優位説」という理屈によると…
ポルトガルでは80人の労働者で1単位のワインをつくっている。
また、90人の労働者で1単位の毛織物をつくっている。

説明: http://www.luna-organic.org/tpp/image-tpp/monkeys-9-1-portugal.jpg

労働者の賃金は価格に反映されるから、労働者の賃金を同じとすれば、毛織物よりも、ワインの方が安くつくれることになる。これを、ポルトガルでは毛織物よりもワインが「比較優位にある」という。
ちなみに、必要な労働者は合計で170人だ。
一方イギリスでは、120人の労働者で1単位のワインをつくっている。
また、100人の労働者で1単位の毛織物をつくっている。

説明: http://www.luna-organic.org/tpp/image-tpp/cats-9-1-england.jpg

ここでは、ワインよりも毛織物の方が安くつくれることになる。つまり、イギリスではワインよりも毛織物の方が「比較優位にある」ことになる。
このとき必要な労働者は合計で220人だ。
さて、ボルトガルで比較優位にあるワインを2単位つくり、イギリスで比較優位にある毛織物を2単位つくって、交換するとしよう。
このとき必要な労働者数は、ポルトガルでは160人。イギリスでは200人となる。

説明: http://www.luna-organic.org/tpp/image-tpp/monkeys-cats-9-1-trade.jpg

どちらの国も以前よりも安くモノが買えるようになる、というのがリカードの説だ。
これが、「関税をなくして自由貿易にすれば、どちらの国も繁栄するんだ」という今日の自由貿易論者たちの根拠になっている。
でも、昔と今とでは時代の状況が違っている。モノが不足していて、モノの値段が高かった時代には、「以前よりも安くモノが買えるようになる」というのは確かにメリットだったかもしれない。
だけど、今は、モノが余っていて、そのせいでデフレ(モノの値段が下がっていく)になって困っている状態。これ以上安くモノが手に入るようになっても、景気はますます悪化するだけなんだ。
それに、もう一つ見落とされていることがある。
ポルトガルの労働者が以前は170人必要だったのに、160人しか必要なくなった、同様にイギリスでは220人だったのに、200人になった、ということは、残りの人たちは失業してしまった、ということなんだ。

説明: http://www.luna-organic.org/tpp/image-tpp/unemployed.jpg

つまり自由貿易は失業の輸出でもあるんだよ。


2.貿易によるお金の流れ

農業国Aと、漁業国Bがあったとしよう。
農業国Aでは、穀物2升と魚の干物1束が同じ値段だったとする。

説明: http://www.luna-organic.org/tpp/image-tpp/farm-country.jpg

漁業国Bでは、穀物1升と魚の干物2束が同じ値段だったとする。

説明: http://www.luna-organic.org/tpp/image-tpp/fish-country.jpg


農業国のaさんが、穀物1升を持って、B国へ行き、魚の干物2束と交換する。その魚の干物2束をA国へ持って帰り、穀物と交換すると、4升になる。つまりは4倍の儲けになる。
説明: http://www.luna-organic.org/tpp/image-tpp/monkey-business.jpg

今度は漁業国のbさんが、自国で穀物1升を魚の干物2束に交換する。それを持ってA国へ行き、穀物4升に交換して、自国に戻ってくる。bさんもやっぱり4倍の儲けだ。

説明: http://www.luna-organic.org/tpp/image-tpp/cat-business.jpg

2人とも同じように儲けているように見えるけれど、国から国へのモノの流れに着目してみよう。
B国からA国へ移動するのは、どちらの場合も魚の干物2束だ。
でも、A国からB国へ移動するのは、aさんの場合は穀物一升。bさんの場合は穀物4升。
つまり、自国の商人が貿易をする場合は、自国の収益につながる。でも、他国の商人が貿易をする場合は、国から富が流れ出てしまう、富が奪われてしまうんだ。
これが貿易というものの本質だ。貿易によって、富は貿易商の出身国に一方的に流れ込む。貿易商は先進国の人間である場合がほとんどだ。だから、貿易によって、先進国は一方的に儲かり、発展途上国は一方的に収奪され、さらに貧しくなっていく。


3.
自由貿易は先進国に都合がいい
じゃあ、発展途上国が貿易で儲ける方法はないのかな? 実はちゃんとある。それが輸出に関税をかける、という手だ。


普通、国内の会社には法人税がかかって、会社は利益の一部をその国に税金として払うよね。それと同じように、貿易商にもその儲けに対して税金をかけていい はずだ。輸出に関税をかけることで、貿易商からその利益の一部を税金として徴収できる。これによって発展途上国の政府は利益を得ることができるんだ。
つまり関税をかけること、何に対してどんな関税をかけるか決めることは、その国の利益を守るために大切なことで、それぞれの国が持っている当然の権利なんだ。
それをなくせ、っていうのが自由貿易。
「自 由貿易によってこそ両国は共に継続的に繁栄し、人々の生活は向上する」というのが、経済学者の説く通説で、政府も、官僚も、マスコミも、ビジネスマンも、 ほとんどの人がそれを信じてる。でも実際には、先進国の貿易商に都合のよい貿易取引を、発展途上国に押し付けるためのへ理屈、デタラメでしかない。
これが本当にデタラメかどうか考えるには、経済学の詳しい知識はいらない。
世界の国々で現実に何が起きているかを見るだけで十分だ。
世界の国々は本当にともに繁栄してきたのかな?
アメリカ、日本、ヨーロッパなどの先進国が、戦後どんどん豊かになってきたのに比べ、発展途上国はどうだろう。
発展途上国からの輸出品の代表はコーヒーだ。
わたしたちがコーヒーに払う値段のうち、生産された国に渡るお金は、わずか10〜15%程度。そのうち農家の手に落ちるのは、わずか5%程度だけ。
コーヒーの値段のうち、85〜90%は貿易商、加工業者など先進国の人々の懐に入ってしまう。
しかもコーヒーの価値は下がる一方だ。
1980年にはコーヒー1トンと原油95バレルが同じ値段だった。
でも、1990年には67バレル。


2003年には39バレル。
2009年には37バレル。
つまり、コーヒをつくっている人たちは、同じ量のコーヒー豆をつくっても、それと引き換えに得るお金やモノがどんどん少なくなっていくということ。貧しくなる一方だということだ。

           
キー!
途上国の人間はいくら働いても貧乏になる一方じゃ!

この現実を見ただけでも「自由貿易によって両国は共に継続的に発展する」などというのが単なるデマだとわかるね。
利益をむさぼりたい大企業が、自分たちに都合のいいデマを流しているにすぎないんだ。
目を覚まそう。世界では先進国が途上国を搾取し、先進国でも大企業が大部分の人々を搾取している。そんな社会に歯止めをかけるための一歩を踏み出そう。さあ、みんなで、TPPにNO!の声を!


「サルでもわかるTPP」
著者:安田美絵
ルナ・オーガニック・イ ンスティテュート(マクロビオティック料理教室&持続可能な食の学校)主宰。早稲田大学卒。食と健康、農業、貿易などの関係を調べるうちに、大企業(主に アメリカの)の数々の悪事を知り、世間の大部分の人々が搾取されているのにそれを全く自覚していない現状に気付く。食の選択によって健康が実現できるだけ でなく、環境問題、南北問題、グローバリゼーションの問題など、さまざまな問題を解決できることを、料理教室や講演によって訴えている。
ルナ・オーガニック・インスティテュート
〒141-0001東京都品川区北品川5-16-19
ホームページ http://luna-organic.org
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